訪問看護では、利用者の皆様が家庭や地域社会で安心・安全・快適な生活を送って頂けるように助言援助などトータルサポートを行っています。援助者が「そのひとらしく」「その人に合わせた」ケアを考えても、看護を受ける利用者様が乗り気にならなければ成立しません。

高齢の方には、家族や生活の為に働き続け、趣味などは二の次だったという方が多くいらっしゃいます。特に男性に多いと思うのですが、仕事を勇退されたあと、趣味や生きがいにつながる楽しみを見るけるのが至難の業、奥様と二人暮らしの81歳になるＮ様も同じでした。退院後は内服治療継続し症状安定されていますが、体力の低下とともに気力がわかず一日中テレビを見て自宅で過ごす日が続きました。

ある日、ひょんなことから塗り絵を提案したところ、まさかの快諾！！塗り絵をお渡しし翌週伺うと美的センスたっぷりの絵画のような作品が出来上がっていました！

Ｎ様の作品は独特です。塗り絵といえば枠を塗りつぶすという概念でしたが、Ｎ様は逆なのです。白い画用紙の色をうまく生かしています。どのように塗るかＮ様に伺うと「全体を想像し、一番際に着手した色のバランスから配色を考える」つまり色を足すのではなく、“色を引き算”して色を塗ったところを際立てるのです。私たちはＮ様の作品が好きで新作を楽しみにしています。

塗り絵に取り組むことは、心理的ストレス発散や自律神経機能を調整する働きがあると考えられているそうです。塗り絵を取り入れたことで、生活にメリハリがつき、気分転換、自信にも繋がっているように感じます。

このような関わりから楽しみ、趣味、才能などに出会うきっかけ作りのお手伝いができるのも訪問看護の醍醐味です。「少しでも興味があればやってみる」新たな一歩を踏み出すことで思いもよらない、素敵な出会いがあるかもしれませんね。