グリーフケア
愛しい人との死別の前後、家族は大きな悲嘆(グリーフ)を感じ、精神的にも身体的にも様々な反応が現れる事が有ります。そうした家族の悲嘆を和らげ、日常生活を続ける過程を支援する事を、グリーフケアといいます。以前、在宅看取り中心の訪問看護に従事していたころは、利用者様がお亡くなりになった時点で介入が終わっていたため、ご家族の悲しみに寄り添う機会がありませんでした。
今回はその“グリーフケア”を念頭に置きながら訪問させていただいたK氏(統合失調症・50歳・男性)が、90歳の父親を自宅で看取った話をご紹介させていただきます。
K氏は、肺気腫で治療中の父親と会社員の妹と、3人で暮らしていました。
父親が7月の初めに、肺炎になり近所の病院に入院しましが、「早く自宅に帰りたい」と訴える為、短期間での退院となりました。ヘルパーさんや、往診医、ケアマネ等の助けを借りて、在宅療養が始まりました。
もともと引きこもりがちで、家族以外の関わりが殆ど無いK氏は、1日に数回父親のケアに入るヘルパーさん達に慣れないと話していました。K氏は、対人交流にストレスを感じやすい為、その事で体調を崩す事が心配されました。私達は、他者が家に訪れる事へのストレスを傾聴し、慣れない介護に挑戦しているK氏をねぎらい、承認する様に関わりを持ちました。K氏は目の前のケアを(食事介助等)淡々とこなしながら、休息も取るように心掛けている様でした。
父親の食事摂取量が徐々に減り、寝ている時間も長くなってきました。退院してから2週間経った早朝に、眠るように息を引き取ったとの事でした。
私達は、亡くなってから数日後に訪問にうかがいました。そこで、生前の父親の話を聞くことが出来ました。幼いころは釣りに良く連れて行ってくれた事、音楽が好きでビートルズなどを聞いていた事。何よりとても優しい父親だった事を、教えてくれました。
K氏は、父親の希望通りに在宅で看取り、最後は苦しまずに亡くなった事で悔いは無いと、清々しい表情で話してくれました。強い悲嘆や気分の落ち込み“グリーフ”や体調の変化は今のところ観られていませんが、時間が経過する中で悲しみが実感として湧き上がることもあるかもしれません。今後も、K氏の様子を注意深く観ていかなければならないと思いました。
K氏が経験した、看取りの達成感や介護経験の自信が、これからの生活に向かうK氏の力になってくれればと願っています。
私達も、今回の体験を踏まえて、今後のケアに役立てていきたいと思っています。
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